有料老人ホームのパンフレットを開くと、まず目に入るのが「入居一時金○○万円」という数字です。数十万円のホームもあれば、数千万円というホームもあり、この幅の大きさが検討をむずかしくしています。ただ、金額の意味そのものは難解ではありません。入居一時金とは、ひとことで言えばその居室を長く使う権利に対して、家賃相当額などをまとめて前払いするお金です。
厚生労働省の指針では、有料老人ホームが受け取れる前払金は「家賃・サービス費用の前払い」に限られ、その使いみちと返還のルールを契約書と重要事項説明書に明記することが求められています。つまり、入居一時金は「お礼金」でも「権利金」でもなく、あくまで後から少しずつ費用に振り替えられていく預かり金に近いお金だと理解しておくと、後述する返還金の計算がすっきり分かります。
同じ初期費用でも、名称によって性格がまったく違います。混同すると「戻ると思っていたのに戻らなかった」という行き違いが起きやすいので、契約前に整理しておきましょう。
| 名称 | 性格 | 退去時の扱い |
|---|---|---|
| 入居一時金(前払金) | 家賃等の前払い | 未償却分が返還される |
| 敷金 | 原状回復・未払い金の担保 | 実費を差し引いて返還 |
| 保証金 | 敷金に近い担保金 | 契約により一部償却あり |
| 入会金・事務手数料 | 手続き等の対価 | 原則として戻らない |
近年は入居一時金を設定せず、敷金数か月分のみで入れるホームも増えています。介護付き有料老人ホームの一覧を見比べると、同じ地域・同じ介護体制でも初期費用の設計が大きく違うことが分かるはずです。
入居一時金の説明で必ず出てくるのが「初期償却」と「償却期間(償却年数)」という二つの言葉です。
この二つが分かれば、いつ退去するといくら戻るのかを自分で計算できます。
入居一時金600万円、初期償却20%、償却期間5年(60か月)のホームに入居し、2年(24か月)で退去した場合を考えます。
同じ600万円でも、初期償却30%・償却期間3年という条件なら、2年での返還金は140万円まで下がります。金額そのものより初期償却率と償却期間の組み合わせのほうが、実際の負担を大きく左右するわけです。
なお、入居一時金の水準は地域の家賃相場と連動します。都市部ほど高く、郊外ほど抑えめになる傾向があるため、東京都の費用相場のように、検討エリアの目安をあらかじめ把握しておくと、提示された金額が高いのか妥当なのかを判断しやすくなります。後編では、途中退去や短期解約のときに実際にどこまでお金が戻るのか、そして前払い方式と月払い方式のどちらを選ぶべきかを見ていきます。
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